現役研修医きよすけのブログ

私 きよすけの勉強用のものです。(旧名takuwaningのブログ、昔アカウント名がけんだったころもあります)運営者は医学的助言を行っておりません。当ブログの情報の利用は自己責任でお願いします。

【低栄養】【アルコール多飲】

きよすけの一言
「今回お二人の先生に意見を頂けました。ありがたいです」

 

 

正解は

 

「d 断酒で心胸郭比改善が期待できる」です。

([追記] と正解はdのつもりだったのですが、twitterにて コード・ブルーフラワー @codeblueflower先生からご指摘頂いたのでdも正しい文とは言えないかもしれません。文章の後半にまとめていますのでご覧ください)

問題文

76歳の男性。意識障害のため搬入された。
アルコール多飲歴あり。独居。以前より食事摂取が不十分で、本日隣人に自宅内で倒れていることを発見された。
意識は昏睡。体温34.4℃。呼吸数16/分。脈拍112/分、整。血圧104/60mmHg。くも状血管腫を認める。心胸郭比60%。
最も正しい文を選べ (102E67改) #けん国試

選択肢
a まず経腸栄養を行う
b まずは低体温維持を行う
c 断酒で意識レベル改善が期待できる
d 断酒で心胸郭比改善が期待できる

102E67の改題です。
本来はもっと問題文が長いのですが、基本的にはアルコール多飲によるVitB1欠乏によるウェルニッケ脳症や肝性脳症を疑うべき所見です。
本来の問題では初期対応を問うており、ルート確保、血ガス分析、心電図モニタリング、膀胱カテーテル挿入が正解の対応となり「経腸栄養」が誤りとされています。
また今後想定される問題としては、状況に「血液検査の結果に低血糖」が追加され、その対応が問われるような問題が想定されます。その場合「グルコースのみの静注」が禁忌になりますね。急なグルコース単独の投与は、体内でVitB1の消費を招きます。もしVitB1不足が生じている場合、さらにVitB1不足症状が悪化することを招くので必ずグルコースとともにVitB1を投与することが必要です。(VitB1不足かどうか確かめればいいのでは?と思うかもしれませんが、血糖値は秒で測定できるのに対しVitB1の測定には時間がかかります。結果を待っていられません)

a誤り
低栄養は疑われますけど、経腸である必要はないですよね。ルートで行きましょう。(この選択肢に関して現役医師のやぶえもんさんからTwitter経由でご意見頂きました。当解説の最後にまとめておりますのでご覧ください)
b誤り
まずは低体温の場合、安静、復温が基本です。
c誤り
今は意識レベルは昏睡なので、そもそもお酒飲めてないですよね。なのに昏睡は続いているのですから正解選択肢としてはふさわしくありません。
こういった教習所問題(運転免許試験のような問題のことです。僕オリジナルの呼称なのですが、医学知識ではなく日本語トリックで引っ掛けてくる問題のことです)は時々国試でもでます。
d正解
アルコール性心筋症は拡張型心筋症と似た所見を示しますが、断酒により改善しやすいとされています。

(2019/5/22 加筆)
現役医師であるやぶえもんさん(twitterID@yabuemonch youtubeチャンネルURL https://www.youtube.com/channel/UCwtA0ochUs1YYlEybrP6fnw)から今回の問題に対してご意見を頂きました。
(元ツイートは https://twitter.com/yabuemonch/status/1131111229093629957 と https://twitter.com/yabuemonch/status/1131175976669405186 です。今回の解説では多少編集させて掲載させていただいております。全文をご覧になりたい場合は元ツイートをご覧ください)

「経腸栄養を選択するのは非常に危険。リフィーディング症候群の事もあるけど、それよりも長期栄養失調患者への迂闊な栄養投与はVitB群消費や低Naで痙攣•中枢神経障害リスク大なので実質的に禁忌として欲しいくらい怖い。
またこの患者では肝不全が疑われる為に経静脈栄養でも肝負荷増大からの症状急変があり得ます。なので、輸液療法も投与速度を少なめから始めてビタミン補充とステロイド補充、加温から始めるのが無難と思われます。」

今回の問題の選択肢には直接かかわってきませんが、このように肝不全が疑われる意識消失、低栄養状態の患者への対応は国試だけでなくその先の医者人生においても非常に重要な知識となると思われます。
今回、ご指摘をいただいたやぶえもんさんに感謝申し上げます。

(2019/6/12 加筆)
コード・ブルーフラワー先生からこの問題についてご指摘頂きましたのでツイート内容を紹介させて頂きます。

仰臥位で撮影したレントゲンで心胸郭比は評価できない。むしろAPポータブルで60%ならそんな悪くないとも考えられる。
(今回の解説では元ツイートを多少編集させて掲載させていただいております。全文をご覧になりたい場合は元ツイート https://twitter.com/codeblueflower/status/1138608283713847296 をご覧ください)

QBオンラインの解説(102E67)では心胸郭比の拡大はアルコール性心筋症と考えられる。といった旨の記載はあります。
QBの記載は間違っていないと思いますし、もちろん先生のご指摘も間違っていないと思います。
仰臥位のポータブルAPという過大評価しがちな撮影方法だとしてもアルコール性心筋症を疑えるとは思います。(QBの主旨)
ただこの数値だけでアルコール性心筋症があると決めつけることはできない。ということですね(コード・ブルーフラワー先生のご指摘)
この二つの考え方の十分性と必要性を取り違えた僕のミスでございます。
皆さま申し訳ございません。

また仰臥位、立位の違いやAP、PAの違いなどはこちらにわかりや薄くまとまっておりますので、参考にされてください。
http://citec.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=25698

またみなさんに一つお願いがあります。
もしよろしければ問題を拡散していただけますと助かります。
問題が拡散し多くの方の目に留まれば今回のように、現場で働いていらっしゃる医師の方のようなもとにもツイートが届いて非常に勉強になるようなご意見を頂ける機会が増えるからです。
ご負担にならない程度で構いませんのでご協力いただけますと助かります。
今後もけん国試をよろしくお願いいたします。